【化学・生物・薬学区分】理系院卒から官僚への道
1. はじめに
官僚といえば法学部卒などの文系出身者がなるもの、といった先入観をお持ちではないですか?確かに官僚になる方は文系出身の方が多いです。しかし、霞が関では理系出身でその専門性を生かし、活躍されている方もたくさんおられます!今回の記事では国家総合職試験の化学・生物・薬学区分(院卒)に合格し、内々定を獲得されたYさんにインタビューを行い、試験勉強、官庁訪問等について詳しく伺っていこうと思います!
目次
1.はじめに
2.内々定者インタビュー
2-1.Yさんの経歴について
2-2.国家公務員を目指した理由
2-3.試験対策について
2-4.官庁訪問対策について
2-5.Yさんからのメッセージ
3.最後に
2. 内々定者インタビュー
2-1.Yさんの経歴について
Yさんは6年制の薬学部の出身で、薬の知識を中心に研鑽を積む一方で、公務員試験の勉学に励み、令和4年度の院卒※程度の国家総合職試験(化学・生物・薬学区分)に合格し、同年の官庁訪問で厚生労働省の薬系技官に内々定 といった経歴になります!
(※6年制の薬学部を卒業あるいは卒業見込みの方は院卒区分で国家総合職試験の受験が可能です。またこの試験に合格し、内定を得ると新卒として入省します。)
2-2 国家公務員を目指した理由
ーー本日はよろしくお願いします。まず初めに、なぜ薬剤師として働くことを選ばずに国家公務員になろうと考えたのでしょうか。
A. 現場の薬剤師として目の前の患者さんのために働くことも大切なことですが、薬事行政を通じて、社会保障のケアを十分に受けることができない人を救ったり、薬に関する誤った情報を正すといった、より大きなスケールの医療に貢献したいという気持ちを抱き、国家公務員を志望しました。
ーー上記のような、お気持ちを抱いた契機はどのようなものでしょうか。
A. 昨今のコロナ情勢と薬学を結びつけて考える機会が多くありました。薬剤師が患者のみならず、普段関わらないような国民の健康も含めた公衆衛生上の問題の解決に資するためには、他の医療職種の方々と共に医療のあるべき姿について、議論し共有する必要があると考えました。
2-3 試験対策について
ーー試験勉強はいつ頃から開始されましたか?
A.去年(2021年)の10月頃から始めました。周りでは今年(2022年)の1月くらいから勉強を始める人が多かったように感じます。先輩方もそのようでした。
ーー勉強スタイルはどのようなものでしたか?
A. 予備校には通わず独学で、フリマアプリで参考書を買うなどして勉強していました。専門科目については、薬剤師国家試験の勉強がそのまま活かせると思います。
ーー勉強をするにあたって意識していたことはありますか?
A.まず最初に試験の全体像を把握し、勉強のルートマップを作ることを意識していました。また試験の範囲が広いので、勉強する分野と捨てる分野をはっきり分けることも大切だと思います。
ーーどのように全体像を把握していましたか?
A.こちらのサイトを利用していました。(https://kaseiyaku.com/)こちらは国家公務員試験の化学・生物・薬学区分に特化した幅広い情報が載っているサイトであり、試験の全体像を把握したり各科目の参考書を調べるのに非常に有用でした。
ーー捨てる分野とは具体的にはどこでしょうか?
A.基礎能力試験の知識分野(自然、人文など)です。基礎能力試験の30問中これらは6問しか出題されないので、勉強するにはコストパフォーマンスが低いと思います。専門択一の必須10問の勉強にも時間をかけすぎないことが賢明です。
ーー基礎能力試験の知能分野(文章理解、数的処理)はどのように勉強されましたか?
A.文章理解は過去問を中心に対策しました。英文は過去問を音読するようにしていました。1問あたり約4分で解けることが理想です。英文はアカデミックな文章が出題されますので、過去のTOEFLの勉強が役に立ちました。
数的処理は試験前の3か月ほどで対策しました。曜日ごとに解く分野を決め、毎日1〜2時間ほど過去問を解きました。毎日解き続けることが大切だと思います。また本番の時間配分に関して、解けそうな問題は時間をかけて解き、解けないものは潔く捨てることが重要です。資料解釈2問は確実に正答したいところです。
ーー択一の専門試験はどう対策しましたか?
A. 化学・生物・薬学区分の択一の専門試験は必須問題10題、選択問題は96題のうちから30題の計40題を解答します。必須問題は数学、物理、化学、生物学の基礎の問題ですが、難しい問題もあるので大学受験の際などに勉強しなかった科目に関しては捨てて、選択問題を確実に取りに行く戦略もアリだと思います。選択問題のうち薬学系のものは薬剤師国家試験の時の勉強内容と被るものも多かったですが、個人的には国家試験よりも公務員試験の方が難しかったです。公務員試験は選択肢が細かく、語句の定義などを正確に理解する必要があります。そのため、うろ覚えの知識ではなく、しっかりと言葉の意味を説明できるようになるまで勉強する必要があります。食品学など初めて学ぶ分野は上記サイトに紹介されている参考書を読んで各科目の対策を進めていました。また専門試験全体に言えることですが、出題される分野に偏りがあるので、過去問を解いて傾向をつかんでおくことが大切だと思います。
ーー記述式の専門試験はどのように対策しましたか?
A.私は薬理学と食品学を選択しました。薬理学は国家試験の範囲でカバーできたほか、上記サイトで紹介されている参考書を使って勉強しました。特に食品学はここで紹介されているものが役に立ちました。この専門試験ですが、解答に困ることがあっても自分の知識や考えを書けば加点されているように感じました。わからないことがあってもとりあえず解答欄は埋めたほうが良いと思います。
ーー政策課題討議はどう対策しましたか?
A.政策課題討議は一緒に練習をする人を見つけるのが難しく、対策に苦労しました。レジュメの書き方は×KASUMIの記事を読んで学びました。試験は一つのテーマに対して資料を読み、賛成か反対かの立場を決めてレジュメを書いて説明するといったものでした。ディスカッションをするメンバーはみな同じ区分の受験生だったのですが、議論が始まっても話そうとする人は少なく、私が議論を進めていきました。理系の受験生はグループディスカッションに慣れていない人が多いように感じたので、そのなかでしっかり発言していくことが重要だと思いました。また司会やファシリテーターになることが必ずしも高い評価につながるわけではないようです。
ーー人物試験はどう対策しましたか?
A.人物試験は択一試験が終わってから対策をはじめました。大学のキャリアセンターでエントリーシートを添削してもらったほか、模擬面接を3回ほどしてもらいました。ここでも×KASUMIの記事を参考にしました。この面接で聞かれる質問は当たり障りのないものがほとんどなので、しっかりと準備すれば大丈夫だと思います。
ーー英語試験の加算は利用しましたか
A.TOEICで25点の加算を申請しました。理系の区分では英語試験の加算を受ける人が少ないようなので、加算を受けることでアドバンテージになると思います。1次試験でいうと、4〜5問相当の点数と考えると、大きいですね。
2-4 官庁訪問対策について
ーー官庁訪問はどのように回られましたか
A. 薬系技官志望で1日目に厚生労働省を訪問しました(訪問時期は6〜7月)。厚生労働省の志望度が高かったため、2日目と3日目に他省庁は訪問しませんでした。
ーー官庁訪問ではどのような能力が見られていると感じましたか
A.まず、志望度はかなり見られていると思いました。志望動機や業務の理解を通して志望度をしっかりとアピールしていくことが大切です。自分は厚生労働省しか訪問しなかったのですが、そこでも志望度の高さを伝えることができたと思います。またコミュニケーション能力も重視されており、特に自分が研究した内容をわかりやすく相手に伝える説明能力や、質の高い質問をする能力が見られていると感じました。反対に、語学力や優れた研究実績を持っているかどうかはそこまで見られていないように感じました。
ーー官庁訪問はどのように対策していましたか
A.専門的な話になっても議論についていけるよう、厚生労働省が担当している政策については詳しく調べ、理解するようにしていました。白書は内容がそこまで専門的ではないので、厚生労働省のホームページにある全国薬務関係主管課長会議(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_23980.html)の資料をみて対策していました。これらを読み込んでいったことで、面接の際に質の高い議論ができたと考えています。
2-5 Yさんからのメッセージ
ーー最後に受験生に向けてメッセージをお願いします
A.国家公務員というと、敷居が高く感じられるかもしれませんが、理系の院卒区分は倍率が比較的低いので、私のような大学受験勉強から逃げてきた人間でも太刀打ちできました。また、官庁訪問については、席次(最終合格者順位)や学歴は一切関係なく、志望度、熱意を軸に人物本位で評価されていることを肌で感じました。臆することなくチャレンジしてみてください!
ーー本日は貴重なお話をありがとうございました。
3. 最後に
今回の記事では化学・生物・薬学区分(院卒)で国家公務員総合職試験に合格し、厚生労働省に内々定をもらわれたYさんにインタビューしてきました。同区分での合格を目指している方や、理系の院卒区分での官庁訪問を考えている人にとって非常に有意義な情報であると思います。この記事が皆様のお役に立てれば幸いです。