官僚になりたい私たちが、いま思うこと【内定者・志望者210人の声】
はじめに
こんにちは、ますだと申します。今回は、国家公務員の内定者・志望者たちが霞ヶ関の労働実態に対してどう思っているのか、またなぜ国家公務員を志望するのかを調査しました。印象的な数字とともに彼らのまっすぐな思いを伝えられればなと思います。
今回、『国家公務員志望者および内定者を対象とした霞ヶ関の職場イメージと志望理由に関するアンケート』 を実施しましたので、結果(詳報)を報告いたします。
アンケートは、ますだ(『×KASUMI』ライター)が2020年11月7日(土)~12月1日(火)にかけて実施しました。アンケートの目的や動機についてはこちらに書きましたので、ご一読頂けると幸いです。
※以下全てのグラフ、数値、文言は出典『×KASUMI』を明記いただければ、ご自由に引用頂いて構いません。
✒記事に関するお問い合わせはコチラまで
💡サクッと概要を読むにはリーフレットがおすすめ!
💡リーフレットや詳細な分析を含む全体版の報告書のダウンロードはコチラから
目次
0.回答者の属性
1.国家公務員内定者・志望者が期待していること
1-1.『仕事内容』では「政策立案」が一番人気
1-2.国家公務員の「給与の多さ」に期待している内定者・志望者は約2割
1-3.内定者・志望者の9割超が「国民への貢献」に、やりがいを見出している
2.国家公務員内定者・志望者が不安に感じていること
2-1.内定者・志望者の約9割が「国会対応」「議員対応」に不安を感じている
2-2.9割以上の内定者・志望者が「長時間労働」を不安視
3.国家公務員内定者・志望者の声
4.まとめ
5.最後に
0.回答者の属性
全回答者210名のうち、国家公務員志望者が100名(47.6 %)、国家公務員内定者が110名(52.4 %)でした。また性別は男性138名(65.7 %)、女性69名(32.9 %)、どちらでもない2名(1.0 %)、無回答1名(0.5 %)でした。
さらに文理別では文系143名(68.1 %)、理系62名(29.5 %)、その他3名(1.4 %)、無回答2名(1.0 %)でした。
回答者の卒業(予定)大学は以下の通りです。
1.国家公務員内定者・志望者が期待していること
💡要約
- 内定者・志望者の9割超は「国民への貢献」にやりがいを見出している。
- 貢献の手段として、また仕事そのものの面白さとして「政策立案」が人気。
- 「給与の多さ」に期待している志望者・内定者は非常に少ない。
1-1.『仕事内容』では「政策立案」が一番人気
「国家公務員として働くうえで『仕事内容』に関する以下の項目をそれぞれどの程度期待していますか(1つ回答)」という質問に対して、「とても期待している」「やや期待している」と回答した割合は 「政策を企画・立案、実施する」で85.7 % でした。
また期待項目どうしの比較として、「ここに挙げた期待項目(「その他」を含めて全29項目)のうち特に期待している項目を1つ教えてください」という質問に対して、「政策を企画・立案、実施する」と回答した内定者・志望者は19.4 %で最多でした。
「政策立案」を期待している理由としては、以下のように仕事そのものの面白さを重視する意見と社会貢献性を重視する意見がともに複数見られました。
- 「国家規模の政策立案を通して国全体に大きなインパクトをもたらすことが国家公務員の醍醐味だと思うため」
- 「国全体に影響を及ぼすことのできる政策立案に携わることで、広く社会貢献したいからです」
- 「政策の企画立案で国民に貢献したいから」
1-2.国家公務員の「給与の多さ」に期待している内定者・志望者は約2割
同様に、「給与の多さ」に対して「とても期待している」「やや期待している」と回答した割合は21.0 % でした。
この結果に対応する志望理由として、
- 「待遇や労働環境の面で大変悩んだものの、人々が安心して暮らせる社会を政策や法律づくりから支える仕事をしたいと考えた」
といった、待遇面を妥協してでも働きたいという意見が複数見られました。
1-3.内定者・志望者の9割超が「国民への貢献」に、やりがいを見出している
『やりがい』に関して「とても期待している」「やや期待している」と回答した割合は、**「国民の生活をより豊かにする」において92.9 %、「国民の安全・財産・権利を守る」において91.9 %**でした。これは、全期待項目(28項目)を通してそれぞれ1番目および2番目に高い結果となりました。
2.国家公務員内定者・志望者が不安に感じていること
💡要約
- 内定者・志望者の約9割が霞ヶ関の「長時間労働」に不安を感じている。
- 「長時間労働」は健康に影響を及ぼすレベルだと認識している人が多い。
- 「長時間労働」の原因として「国会対応」「議員対応」にも不安を感じている。
2-1.内定者・志望者の約9割が「国会対応」「議員対応」に不安を感じている
「国家公務員として働くうえで『仕事内容』に関する以下の項目をそれぞれどの程度不安に感じていますか(1つ回答)」という質問に対して、「とても不安に感じている」「やや不安に感じている」と回答した割合は__「国会対応による業務・心理的負担」で90.0 %、「議員対応による業務・心理的負担」で91.8 %__でした。
また「国会対応」を不安に感じている理由として、
- 「会期中の働き方に関しては、役人の知人から生々しい声も耳にしているため」
- 「特に時間と身体的負担が大きいという意見を頻繁に聞いているから」
といった現役官僚の実情を耳にして不安に感じているケースが複数ありました。
さらに「議員対応」を不安に感じている理由としては、
- 「時間が読めず、本来業務に支障が出る可能性があるから」
といった業務のやり方に対する指摘、不安が見られました。
2-2.9割以上の内定者・志望者が「長時間労働」を不安視
同様に、「長時間労働」に対して「とても不安に感じている」「やや不安に感じている」と回答した割合は90.9 % でした。
また不安項目どうしの比較として、「ここに挙げた不安項目(「その他」を含めて全34項目)のうち特に不安に感じている項目を1つ教えてください」という質問に対して、最も回答が多かったのは 「長時間労働」で37.6 % でした。(次点で「国会対応による業務・心理的負担」の14.0 %)
「長時間労働」を不安に感じている理由として、以下のように健康への影響を不安視する声が多くありました。
- 「実際働いてみなければ、自分が長時間労働をできるかわからないから」
- 「体力がある方ではないので体を壊さないか心配。自分に合う働き方ができないのではないかという不安」
- 「長時間労働で、気づかぬ間に身体を壊しそうで怖いです」
加えて 「家事・育児との両立が可能か」 に対して「とても不安に感じている」「やや不安に感じている」と回答した割合は79.6 %と比較的高く、項目比較でも4番目に多い4.3 % (「メディア対応による業務・心理的負担」と同率)でした。
3.国家公務員内定者・志望者の声
国家公務員内定者・志望者の声を一部抜粋してご紹介します。
【国家公務員内定者の志望理由】
- 「日本人を幸せにすることを直接の目的(成果指標)とできる仕事であるため。」
- 「誰もが衣食住に困らない世の中になってほしくて、そのためには国の制度をより良いものにする必要があると考えたから。」
- 「国民の日常が脅かされている中で傍観者でいたくないという思いから。」
- 「恵まれた環境で勉強できたことを、ダイレクトに社会のために還元・貢献できると考えたから。」
- 「災害から国民の安全を守るための制度創り、設備作りに貢献したかったから。」
【国家公務員志望者の志望理由】
- 「責任がある分とても大きなやりがいを感じることができると思うから。社会に過ごす人々の手助けを、現実的にすることができる仕事だから。」
- 「自分の頑張りでたくさんの国民の生活を改善できるやりがいのある仕事だと感じているから。」
- 「日本の教育格差や現行のカリキュラムに疑問を感じ、子どもたちが将来やりたいことを見つけられる環境づくりをしたいと思ったため。」
- 「国の課題を解決し、誰もが暮らしやすい国にしたいから。」
- 「自分のためよりも周りの誰かのために働きたいという意識があった。官僚として国の政策に携わることが出来れば、その『周りの誰か』が日本国民、ひいては世界中の人に広がりうることに魅力を感じる。」
【自由記述欄より】
- 「実際働いてみれば霞ヶ関は、自分のいま持つ理想とは異なるかもしれないし志を叶えることができないかもしれない。しかし、それも承知の上で自分の生きていく上での「日本をよりよくしたい」という信念を満たせるのは国家公務員しかないと思い志望しています。」
- 「健康に働き続けたい。家族との関係を犠牲にせずに働きたい。自分が不幸になることと引き換えに仕事をすることはしたくない。」
- 「国家公務員の働き方改革を行い、残業をなくしてテレワークを推進しない限り、志望者は間違いなく減ると思います。今後変わることを信じて入省しますが、もしも今後も変わらなかった場合、転職を考えざるを得ません。」
- 「内定者ですが、現在労働環境などを考えると入省を悩んでいます。調査をして内定者の状況が可視化されることを期待しています、大変感謝しております。」
- 「労働環境の改善がこれから進んでいくことを願っています。」
4.まとめ
- 「国民への貢献」という動機が内定者・志望者の大部分を支えている。
- 内定者・志望者のほとんどが霞ヶ関の労働環境に不安を感じている。
- 労働環境の適正化と社会貢献の実感を持たせることが今後の鍵。
5.最後に
最後までご覧いただきありがとうございました。上記の通り、多くの国家公務員内定者・志望者が霞ヶ関の 「長時間労働」に対して不安を感じ、さらに健康への影響があると認識している ことがわかりました。
しかしそんな中でも、「国民のために働きたい」という、強い責任感を持っていることが随所から伺えました。
この記事を読んで下さった皆さんをはじめ、一人でも多くの方に、彼らの葛藤やまっすぐな思いが届くことを願います。
【調査概要】
調査名:『国家公務員志望者および内定者を対象とした霞ヶ関の職場イメージと志望理由に関するアンケート』
実施:ますだ(『×KASUMI』ライター)
調査方法:Google フォーム(主にTwitterと国家公務員志望者支援団体のコミュニティにて拡散)
回答者:国家公務員志望者および内定者210名(志望者100名、内定者110名)
調査期間:2020年11月7日(土)~12月1日(火)
調査目的:「国家公務員志望者および内定者が霞ヶ関の労働環境をどう認識しているのか、またなぜ国家公務員を志望しているのかを調査する」